Ume’s Short Stories:9
密会
わたしは長い間彼と向かいあっていた。
いいえ、少しも長くなんかないわ。
他の人にはどう見えるかわからないけれどそれは二人に許されたほんの一瞬。
細くて、今にも切れてしまいそうな二人の時間。
だけど、もうそろそろ離れなければならない。こうして二人で会うことは決して認められることではないから。
でも、もう二度と一緒にいることができないかもしれないという思いがわたしの心を突き刺すのがわかる。
それは彼も同じ。
彼の悲しそうな眼を見ればわかるの。
彼の鋭くて、射るような眼も、今はただ、深い悲しみに覆われているのがよくわかる。
ああ、どうしてこんなにもつらい思いをしなければならないの。いっそのこと、思い切って死んでしまいたいくらい。
でも、それはできない。彼もきっと同じ苦しみを味わっているわ。
「じゃあ、僕は行く」
「行かないで、お願い、もう少しいて」
「仕方ないんだ。君にもわかるだろう」
「・・・ええ」
彼はわたしのために笑顔をつくってみせようとしていたけれど無駄だった。
どうしても悲しい表情になってしまう彼の顔を見ていたら、わたしの涙はもう止まらなくなってきた。
やがて彼は、今二人が隠れていた雲から抜け出し、黒い翼をはばたかせ、先のとがった尾でバランスをとりながら優雅に、でも悲しそうに飛び去っていった。
わたしは、彼のと比べてだいぶ小さい白い翼を力無く動かしながらゆっくりと上に戻った。
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